FTPを効率よく上げたいけれど、何のワークアウトを選べばいいかわからない。MyWhooshには730以上のワークアウトがあり、Sweetspotカテゴリだけでも55本が収録されています。選択肢が多すぎて迷ってしまうのは当然のことです。
この記事では、55本のスイートスポットワークアウトの中から初心者から上級者まで目的別に厳選した10本を紹介します。すべて無料で利用でき、UAE Team EmiratesのWorldTourコーチKevin Poultonが設計した本格的なメニューです。FTPの88-94%という「最も時間効率の良い強度帯」で、限られた練習時間を最大限に活かせます。
スイートスポットの時間効率が注目される3つの理由
スイートスポットトレーニング(SST)とは、FTP(1時間維持可能な最大パワー)の88-94%で行うトレーニングのことです。テンポ走よりもやや強く、閾値走よりもやや楽な「ちょうどいい強度帯」を指します。
RPE(主観的運動強度)では10段階中7程度で、「きついけれど会話はぎりぎりできる」くらいの体感です。
この強度帯が注目される最大の理由は、トレーニング効果と身体への負担のバランスに優れている点にあります。90分のSSTセッションは、3時間のZone 2(低強度有酸素)ライドと同等の有酸素効果が得られるとされています。
つまり週5時間のトレーニング時間でも、従来10-20時間かけていたベーストレーニングと同等の適応を引き出せるということです。
生理学的には、SSTはミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)の新生成を促し、毛細血管密度を向上させ、乳酸処理能力を改善します。これらの適応が合わさることで、より高いパワーをより長時間維持できる身体が作られていきます。
ただしSSTは万能ではありません。週1-2回が推奨頻度で、3回以上はオーバートレーニングのリスクがあります。また、SST一辺倒ではパフォーマンスが頭打ちになることも知られており、VO2maxインターバルやスプリントトレーニングと組み合わせることが効果を最大化するポイントです。
MyWhooshのSweetspotカテゴリが持つ3つの強み
MyWhooshのSweetspotカテゴリには55本のワークアウトが収録されています。これは単にスイートスポット強度で漕ぐだけのメニューではなく、クライミング特化型、無酸素容量との複合型、ケイデンスドリル型など多様なバリエーションが用意されているのが特徴です。
最大の強みは、これらすべてが完全無料で利用できることです。Zwiftでは月額有料のサブスクリプションが必要ですが、MyWhooshは同等以上のワークアウトライブラリを無料で提供しています。Cyclist Magazine誌も「構造化ワークアウトとトレーニングプランが巧みに設計されている」「Zwiftよりも充実した点がある」と評価しています。
もうひとつの強みは、全ワークアウトがKevin Poultonによって設計されている点です。Kevin PoultonはUAE Team EmiratesのWorldTourコーチであり、Caleb Ewan、Alex Dowsett、Mat Haymanといったプロ選手を指導してきた実績があります。DC Rainmakerも同氏設計のワークアウトを高く評価しています。
さらに、ERGモード対応のスマートトレーナーを使えば、FTPに基づいてパワーが自動調整されるため、設定した強度を正確に維持できます。ペダルを踏む力を意識しなくても、トレーナーが負荷を制御してくれるので、フォームやケイデンスに集中できるのがERGモードとSSTの相性の良さです。
MyWhooshでSSTを始める前に必要な準備
SSTワークアウトを効果的に行うためには、正確なFTP値の設定が不可欠です。SSTの強度はFTPの88-94%として計算されるため、FTPが正確でなければ狙った効果が得られません。
MyWhooshにはFTPテスト用のワークアウトが用意されているので、まずはこれを実施します。テスト結果に基づいてFTP値を設定すれば、全てのワークアウトの強度が自動的に調整されます。FTPテストは4-6週間ごとに再測定するのが理想的です。トレーニング効果でFTPが向上すれば、それに合わせてワークアウト強度も上がっていきます。
必要な機材としては、ERGモード対応のスマートトレーナーが特に推奨されます。ERGモードがあれば指定パワーを自動で維持してくれるため、SSTの「一定強度を長時間維持する」という要求に集中しやすくなります。心拍計も併用すると、パワーだけでなく心拍数の推移からトレーニング効果をより正確に把握できます。
初心者向け:5分インターバルから始める基本の3本
SST初体験であれば、まず短いインターバルから身体をSweetspot強度に慣らすことが大切です。以下の3本は、いずれも5-6分のインターバルで構成されており、初めてでも完遂しやすい設計になっています。
Sweetspot Training(41分・IF 0.71)

55本の中で特に取り組みやすい入門ワークアウトです。構造は非常にシンプルで、5分間のウォームアップのあと、FTPの86%で5分間漕ぎ、5分間の回復を挟む流れを3回繰り返します。最後に5分間のクールダウンで終了です。
メインセットの合計は15分間だけなので、SSTの「きついけれど持続できる」感覚を掴むのに最適です。86%という強度はSweetspotゾーン(88-94%)の下限よりやや低めで、まさにSSTへの「入り口」として設計されています。
Sweetspot #1(50分・IF 0.75)
入門ワークアウトに慣れたら、次はこのSweetspot #1に進みます。インターバル時間が5分から6分に延び、回復時間は5分から2分に短縮されます。メインセットは3本×6分=18分間で、回復時間が短くなった分だけ身体への要求が上がります。
強度は同じくFTPの86%ですが、回復が短いことで2本目、3本目にかけて心拍数が徐々に上がっていくのを感じるはずです。この「セット後半の心拍ドリフト」を体験することが、SSTトレーニングの核心を理解する第一歩になります。
Stepped Intervals(44分・IF 0.78)

ステップ式に強度が変化するこのワークアウトは、Sweetspot #1からSweetspot 20 minuteへの橋渡しとして有効です。一定強度を維持するのではなく段階的にパワーが上がっていくため、「どの強度でどんな感覚になるか」を身体で覚えられます。
TSSは45と低めに抑えられているので、トレーニング負荷が心配な初心者でも安心して取り組めます。
中級者向け:10-20分の持続力を鍛える4本
5分インターバルを安定してこなせるようになったら、インターバル時間を10-20分に延ばして持続力を鍛えるフェーズに入ります。ここからはクライミングやSub Thresholdなど、より実践的な要素が加わります。
Sweetspot 20 minute(59分・IF 0.81)

SSTの王道とも言える「20分間持続」に挑戦するワークアウトです。ウォームアップとビルドアップの後、4分間のプライマー(FTPの95%)で身体を起こし、メインの20分間ランプに入ります。
メインセットでは88%から94%へ徐々にパワーが上がっていくランプ形式を採用しています。最初は余裕を感じても、15分を過ぎたあたりから心拍数が上昇し、ラスト5分は精神力も試されます。さらにメイン後には1分間のFTP98%ショートインターバルが5本入っており、疲労した状態でのパワー発揮を体験できます。
Sub Threshold #1(55分・IF 0.80)

10分間のランプ式SSTを2本行うワークアウトです。このワークアウトの特徴は、各ランプの前に30秒間のVO2maxサージ(FTPの110%)が入る点にあります。
短い高強度のあとにSweetspot強度へ移行することで、心拍数がすでに高い状態からSSTを維持する練習になります。レースで一時的にペースが上がった後、再びFTP付近でペースを刻む場面を想定した構成です。パワーの増減が心拍数にどう影響するかを観察しながら取り組むと、自分の有酸素効率について多くのことがわかります。
Progressive Climb #1(56分・IF 0.80)

ヒルクライム力を強化したいなら、このワークアウトが最適です。3本の10分間クライムで構成されており、各クライムはFTPの80%で5分、95%で4分、105%で1分というプログレッシブ(段階上昇)構造になっています。
このワークアウトの独自性は、3本のクライムそれぞれでケイデンス指定が異なる点です。1本目は85rpm、2本目は80rpm、3本目は75rpmと、セットが進むにつれてケイデンスが下がっていきます。低ケイデンスほどペダルにかかるトルクが増すため、屋外のクライミングで実際に体験する「後半の重いペダリング」をシミュレーションできます。
Steady Climbing #1(54分・IF 0.75)

Progressive Climbとは異なるアプローチで、クライミング持久力を鍛えるワークアウトです。4本の5分間ランプで構成されており、各ランプはFTPの76%から92%まで段階的に上昇します。ケイデンスは80rpmに固定されており、シートに座ったまま(シッティング)のクライミングポジションが推奨されます。
Zone 3の下部からZone 4で終了するランプ式のため、Progressive Climbよりも全体的な強度は控えめです。クライミングの基礎体力を作りたい段階や、Progressive Climbの前段として取り組むのに適しています。
上級者向け:レース実践力を磨く高強度3本
SSTの基礎が固まり、20分間の持続走が安定してきたら、無酸素容量との複合型やレースシミュレーション型にステップアップします。これらのワークアウトはIF 0.88以上と高強度で、SSTの枠を超えたマルチゾーントレーニングです。
Sub Threshold XX #1(50分・IF 0.89)★MyWhoosh公式Top5選出

MyWhoosh公式ブログで「Top 5 Workouts」のひとつに選ばれ、「レースに勝つためのセッション」と紹介されたワークアウトです。
メインセットはFTPの91%で2分30秒漕ぎ、直後にFTPの120%(VO2maxゾーン)で30秒間バーストする流れを10回繰り返します。合計30分間のブロックです。
91%の持続走で疲労が蓄積する中、30秒ごとに訪れる120%のバーストが乳酸処理能力を限界まで刺激します。レース中にアタックがかかり、それに反応しつつもFTP付近でペースを維持しなければならない場面を再現した構成です。ケイデンスは85rpmが推奨されています。
AC + Sweetspot #1(1時間2分・IF 0.98)

無酸素容量(AC)とスイートスポットを組み合わせた高強度複合ワークアウトです。前半は10秒間のFTP180%スプリントを4本こなし、続いてFTPの150%から122%まで段階的にパワーが下がる降下型インターバルを5セット行います。
ここで注目すべきは後半のSSフィニッシュです。無酸素インターバルでグリコーゲンを消耗させた状態から、10分間のSweetspotランプ(94→88%)に入ります。すでに疲弊した身体でSSTを維持する経験は、長時間レースの終盤で求められる能力そのものです。TSS 99、IF 0.98というカテゴリ内でも屈指の高強度メニューです。
Lactate Clearance(1時間10分・IF 0.74)

IF自体は0.74と数値上は控えめに見えますが、構成を見ると上級者向けであることがわかります。メインセットでは、FTPの120%で30秒間漕いだ直後にFTPの90%で1分30秒、さらにFTPの75%で2分間という流れを3回×2セット繰り返します。
高強度で乳酸を意図的に溜め、中強度で処理し、さらに低中強度で完全なクリアランスを行うという3段階のプロセスを体験するワークアウトです。この乳酸処理能力はレースやグループライドで集団のペース変化に対応するために不可欠な能力であり、SSTの持久力トレーニングを補完する意味でも取り入れる価値があります。
MyWhoosh SST全55本の分類と強度データ
55本のSweetspotワークアウトは、大きく8つのサブカテゴリに分類できます。自分の目的に合ったカテゴリから選ぶことで、効率的にトレーニングを進められます。
| カテゴリ | 本数 | IF範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 基本Sweetspot | 8本 | 0.71-0.90 | 入門〜中級の基礎メニュー |
| 時間指定Sweetspot | 6本 | 0.80-0.86 | 6分・12分・15分・20分の持続インターバル |
| Sub Threshold | 8本 | 0.80-0.93 | 閾値下の持続走、レース実践型を含む |
| Progressive Climb | 5本 | 0.80-0.87 | 段階上昇型クライミング |
| Steady Climbing | 4本 | 0.76-0.83 | 一定ペースのクライミング持久力 |
| AC + Sweetspot | 9本 | 0.76-1.00 | 無酸素容量との複合高強度 |
| ケイデンス・SFR | 8本 | 0.75-0.80 | ケイデンスドリル、低回転筋力 |
| 特殊ワークアウト | 7本 | 0.74-0.87 | 乳酸クリアランス、爆発的クライム等 |
IFが0.71-0.77のワークアウトは初心者向けの基礎メニュー、0.78-0.85は中級者向けの持続力強化、0.86以上は上級者向けのレース実践メニューと考えると選びやすくなります。TSS(トレーニングストレススコア)は34-105の範囲で、その日のコンディションや週間の疲労管理に合わせて負荷を調整できます。
SSTワークアウトの効果を引き出す4つの実践ポイント
FTPは4-6週間ごとに再測定する
SSTの強度はFTPの88-94%として計算されるため、FTPが向上しているのに古い値のままでは強度が不足します。4-6週間ごとにMyWhooshのFTPテストを実施し、常に正確な強度でトレーニングすることが成長を持続させるカギです。
週1-2回を守り、3:1の周期を意識する
SSTは効果的なトレーニングですが、週3回以上行うとオーバートレーニングにつながるリスクがあります。推奨頻度は週1-2回です。さらに、3週間のトレーニング期間のあとに1週間のリカバリー週を設けるサイクルを意識することで、身体に適応の時間を与えられます。
ERGモードのケイデンスに注意する
ERGモードでは設定パワーに対してケイデンスが下がるとトルクが増加し、さらにケイデンスが下がるという「スパイラル・オブ・デス」が発生することがあります。SSTの指定ケイデンス(通常80-90rpm)を意識的に維持し、疲労で回転が落ちてきたら無理せず軽いギアに切り替えるか、一時的にケイデンスを上げて立て直しましょう。
SSTだけに頼らず他のゾーンも組み合わせる
SST一辺倒のトレーニングでは、ある段階でパフォーマンスが頭打ちになることが知られています。SSTでベースを構築しつつ、週に1回はVO2maxインターバル(FTPの106-120%)やスプリントトレーニングを取り入れることで、より幅広い能力を向上させられます。MyWhooshのSweetspotカテゴリにもAC + Sweetspotのような複合型が含まれているのは、まさにこの理由からです。
SSTの強度設定やMyWhoosh操作で迷いやすいポイント
SSTはFTPの88-94%とされているが、MyWhooshのワークアウトでは86%のものが多いのはなぜか
MyWhooshの入門〜基本ワークアウト(Sweetspot Training、Sweetspot #1等)では、メインセットの強度がFTPの86%に設定されています。これはSweetspotゾーンの下限(88%)よりわずかに低い設定で、SSTに慣れるための「導入強度」として設計されたものです。Sub Threshold系やSweetspot 20 minute以降のワークアウトでは88-94%の正規Sweetspot強度で構成されているため、段階的にステップアップすれば正しい強度帯でトレーニングできます。
ERGモードとSIMモードのどちらでSSTを行うべきか
SSTワークアウトでは基本的にERGモードが推奨されます。ERGモードではスマートトレーナーが自動でパワーを制御するため、一定強度を正確に維持でき、SST本来のトレーニング効果を得やすくなります。ただし、Progressive ClimbやSteady Climbingシリーズのようにケイデンス指定のあるワークアウトでは、ERGモードでケイデンスを変えるとトルクが急変する可能性があります。ケイデンスドリルの際は、ケイデンスの変化を滑らかに行うことを意識してください。
SSTのワークアウトを完遂できない場合はどうすればよいか
メインセットの後半で目標パワーを維持できなくなる場合、2つの可能性があります。ひとつはFTP値が実際よりも高く設定されている場合で、この場合はFTPテストを再実施してください。もうひとつは単純に身体がまだその強度に対応できていない場合で、その場合はひとつ下のレベルのワークアウトに戻り、安定して完遂できるようになってから再挑戦するのが効果的です。
55本のうち、まず何から始めればよいか
SST未経験者はSweetspot Training(41分・IF 0.71)から開始するのが最も安全です。慣れてきたらSweetspot #1(50分・IF 0.75)に進み、その後はSweetspot 20 minute(59分・IF 0.81)やSub Threshold #1(55分・IF 0.80)へステップアップします。目安として、あるワークアウトを2-3回こなして楽にクリアできるようになったら次のレベルに進む、というペースが適切です。
まとめ
MyWhooshのSweetspotカテゴリには、入門から最高難度まで55本のワークアウトが揃っています。すべてUAE Team EmiratesのWorldTourコーチKevin Poultonが設計した本格的メニューであり、これが完全無料で使えるのは大きな価値です。
初心者はまずSweetspot Training(41分・IF 0.71)で5分インターバルからスタートし、基本に慣れたらSweetspot 20 minute(59分・IF 0.81)で持続力を鍛えます。レース志向であればMyWhoosh公式Top5にも選ばれたSub Threshold XX #1(50分・IF 0.89)が、乳酸処理能力と疲労耐性を同時に鍛えるおすすめの選択肢です。
まずはMyWhooshでFTPテストを行い、正確なFTP値を設定するところから始めてみてください。週1-2回のSSTセッションを継続すれば、4-6週間後のFTP再測定で成長を数値として確認できるはずです。


