「Zwiftでもっと速く、もっと長く走れるようになりたい!」
多くのサイクリストがそう願って、日々バーチャルライドを楽しんでいることでしょう。高強度のインターバルやレースに挑戦するのも素晴らしいですが、実は「楽だけど、ちょっときつい」と感じるZone 2(Z2)でのトレーニングこそが、長期的な持久力向上の鍵を握っています。
しかし、「Zone 2って具体的に何?」「Zwiftでどうやってやればいいの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この記事では、そんなあなたのために、
- そもそもZone 2トレーニングとは何か、なぜ重要なのか
- 自分のZone 2強度を把握する方法
- ZwiftでZone 2ワークアウトを実践する具体的な方法(ワークアウトライブラリ、フリーライド、カスタム)
- より効果を高めるためのコツや注意点
などを、網羅的にわかりやすく解説します。この記事を読めば、あなたもZwiftを使って効果的なZone 2ワークアウトを実践し、着実に持久力を向上させることができるはずです。
そもそもZone 2トレーニングとは?
Zone 2(Z2)とはどのくらいの強度?
トレーニングにおける「ゾーン」とは、運動強度を段階的に分けたものです。一般的に心拍数やパワー(FTP基準)に基づいて設定され、Zone 1(回復走レベル)からZone 5以上(最大強度)まであります。
Zone 2は、その中でも比較的低い強度の領域を指します。具体的には、以下のような感覚です。
- 会話ができる程度の強度
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息が上がるほどではなく、隣の人と楽に会話を続けられるペース。
- 楽だけど、ややきつい
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心拍数やパワーは少し上昇するが、長時間継続できると感じるレベル。
- 脂肪が燃焼しやすい強度
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エネルギー源として脂質が使われる割合が高い。
Zone 3以上になると、会話が途切れがちになり、乳酸が溜まり始める感覚が出てきます。Zone 2はこの「楽」と「きつい」の境界線あたり、心地よい努力感を伴うペースと理解すると良いでしょう。
なぜZone 2トレーニングが重要なのか?その効果とメリット
地味に感じるかもしれないZone 2トレーニングですが、サイクリストにとって、特に持久力の基礎(ベース)を作る上で非常に重要な役割を果たします。主な効果とメリットを見てみましょう。
- 1. ミトコンドリアの増加・活性化
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細胞内でエネルギーを生み出すミトコンドリアの質と量が高まります。これにより、エネルギー生成能力全体が向上します。
- 2. 脂質代謝能力の向上(脂肪燃焼効率アップ)
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体脂肪をエネルギーとして利用する能力が高まります。これにより、長時間のライドでもエネルギー切れを起こしにくくなり、体脂肪燃焼も促進されます。
- 3. 毛細血管の発達促進
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筋肉への酸素供給ルートである毛細血管が増え、より多くの酸素を筋肉に届けられるようになります。
- 4. 疲労回復能力の向上
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低強度で体を動かすことで、血行が促進され、疲労物質の除去を助けます。
- 5. 高強度トレーニングへの耐性向上
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しっかりとした持久力の土台があることで、より高い強度のトレーニング(Zone 4やZone 5)の効果も高まり、耐性もつきます。
つまり、Zone 2トレーニングは、ピラミッドの土台を大きく、強固にするようなもの。この土台がしっかりしているからこそ、その上に高いパフォーマンスを積み上げることができるのです。
自分のZone 2を確認する方法
効果的なZone 2トレーニングを行うためには、まず自分のZone 2がどのくらいの強度なのかを把握する必要があります。
Zone 2の設定に必要な指標:FTPまたは最大心拍数
運動強度を設定するには、主に以下の2つの指標が使われます。
- FTP (Functional Threshold Power / 機能的作業閾値パワー)
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1時間持続可能とされる最大パワー。パワーメーターを使用する場合の基準となります。ZwiftではFTPを基準にしたパワーゾーン設定が一般的です。
- 最大心拍数 (Max Heart Rate)
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その人が達成できる最大の心拍数。心拍計を使用する場合の基準となります。
FTP(機能的作業閾値パワー)の測定方法
Zwiftでパワーゾーンを正確に設定するためには、FTPの測定が不可欠です。ZwiftにはFTPを測定するためのワークアウトメニューが用意されています。
- Ramp Test / Ramp Test Lite
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徐々に負荷が上がっていき、限界までペダルを回す形式。比較的短時間で済み、初心者にもおすすめです。
- FTP Test (20 min) / FTP Test (shorter)
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ウォームアップ後、20分間(またはそれ以下)全力で走り、その平均パワーからFTPを算出する形式。より正確な測定が可能ですが、ペーシングが重要になります。
これらのテストを定期的に(例: 4~8週間に1度)行い、FTPを更新することで、常に適切な強度でトレーニングを行うことができます。
パワーゾーンに基づいたZone 2の計算方法
FTPが分かれば、Zone 2のパワー範囲は自動的に計算されます。一般的に、Zone 2はFTPの56%~75% の範囲とされています。
Zwiftでは、FTPを入力すると自動で各パワーゾーンを設定してくれるため、自分で計算する必要はほとんどありません。トレーニング画面には現在のパワーがどのゾーンに該当するかが色分けされて表示されるので、一目で確認できます。
心拍ゾーンに基づいたZone 2の計算方法(参考)
心拍計を主に使用する場合は、最大心拍数を基にゾーンを設定します。まず、自分の最大心拍数を把握する必要があります(例: 激しい運動の最後に測定する、など)。
一般的に、Zone 2は最大心拍数の60%~70% の範囲とされます。
(例: 最大心拍数が190bpmの場合、Zone 2は約114bpm~133bpm)
ただし、心拍数は体調、気温、カフェイン摂取、睡眠不足など様々な要因で変動しやすいため、パワーゾーンと併用するのがより正確です。
Zwiftでのゾーン設定確認・変更方法
Zwiftアプリ内のメニュー(設定 > プロフィールなど)で、現在のFTP設定値や、それに基づいて計算された各パワーゾーン(Zone 1~6など)を確認・変更できます。心拍ゾーンも同様に確認・設定が可能です。
トレーニングを開始する前に、自分の設定が正しく入力されているか確認しましょう。
ZwiftでZone 2ワークアウトを行う具体的な方法
自分のZone 2がわかったら、いよいよZwiftで実践です。主に3つの方法があります。
方法1:Zwiftのワークアウトライブラリを活用する
Zwiftには膨大な数のワークアウトメニューが用意されており、Zone 2トレーニングに適したものも多数含まれています。
- 個別のワークアウトの探し方
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「Endurance」コレクションを選択
ワークアウト選択画面にある「コレクション」の中から「Endurance」カテゴリーを選びます。ここには、Zone 2での走行を主体とした持久力向上を目的とするワークアウトが集められているため、効率的に目的のワークアウトを見つけることができます。
フィルターを活用して絞り込む
希望するトレーニング時間(例: 60分~90分、90分以上など)や、エフォートで自分に合った負荷のワークアウトを選び出すことができます。
トレーニングプランの活用
個別のワークアウトだけでなく、複数のワークアウトで構成される「トレーニングプラン」にも目を向けてみましょう。プランの選択画面で目的(例: 「持久力向上」「長距離イベント準備」)や内容を確認し、Zone 2中心のワークアウトが多く含まれるプラン(例: 「Gran Fondo」プランなど)を選ぶのも有効です。プランの説明をよく読み、全体の構成を確認することが重要です。
- ERGモードの活用
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スマートトレーナーを使用している場合、選択したワークアウトを実行する際に「ERGモード」をオンにすると、Zwiftが自動で負荷を調整し、指定されたZone 2パワーを維持してくれます。これにより、パワーコントロールの手間が省け、ペダリングに集中しやすくなります。
方法2:ロボペーサーを活用する
Zwiftの人気機能「ロボペーサー (RoboPacers)」もZone 2トレーニングに非常に有効です。ロボペーサーは、設定された一定のペース(W/kg = ワットパーキロ)で走り続けるAIライダーです。
- やり方
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ホーム画面の「24/7 グループライド」セクションからグループライドに参加します。
- メリット
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- 一定ペース
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ペーサーについていくことで、自分でパワーを細かく調整する手間なく、Zone 2を維持しやすくなります。
- 集団走行の楽しさ
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大勢のライダーと一緒に走るため、単独走よりもモチベーションを維持しやすく、飽きにくいです。
- ドラフティング効果
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集団内で走ることで空気抵抗が減り(ドラフティング)、同じ速度を維持するためのパワー出力が単独走よりも少なくて済みます。これにより、楽にZone 2を維持できたり、より長く走れたりします。
- 適切なロボペーサーの選び方
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- 自分のZone 2パワーの上限と下限を、自身の体重(kg)で割って、目標とするW/kgの範囲を把握します。
- 重要:
- 集団内ではドラフティング効果があるため、実際にペーサーについて走る際は、自分の単独走でのZone 2 W/kgよりも低いW/kg設定のペーサーで、ちょうど良いパワーになることが多いです。
- いくつかのペースのロボペーサー(例: Cペースの”Maria”、”Coco”など)に参加してみて、実際に走行しながら自分のパワー表示を確認し、それがZone 2の範囲内に収まっているかを確認しましょう。試してみて最適なペーサーを見つけるのがベストです。
方法3:カスタムワークアウトを作成する
Zwiftには、自分でオリジナルのワークアウトメニューを作成できる機能があります。これを使えば、自分だけのZone 2ワークアウトを作ることが可能です。
- 作り方
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Zwiftアプリ内の「ワークアウト作成」ツール(PC版などで利用可能)を使います。
- 例:シンプルな90分 Zone 2 ワークアウト
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- ウォームアップ: 10分 (Zone 1から始めて徐々にZone 2下限へ)
- メインセット: 70分 (Zone 2範囲内で一定パワー)
- クールダウン: 10分 (Zone 1へ徐々に下げる)
- メリット
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自分の目的や都合に合わせて、好きな時間、好きな構成のワークアウトを自由に作れます。
効果的なZwift Zone 2ワークアウトのためのコツ・注意点
せっかくZone 2ワークアウトを行うなら、より効果を高めたいですよね。以下の点を意識してみましょう。
適切な時間と頻度
- 時間
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Zone 2トレーニングの効果(特に脂肪燃焼促進やミトコンドリア増加)を得るためには、ある程度の時間が必要です。最低でも60分以上、できれば90分~120分以上行うのが理想的です。
- 頻度
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トレーニング全体のバランスにもよりますが、ベース期間中であれば週に2~3回程度を目安に取り入れると良いでしょう。
継続するための工夫
Zone 2ワークアウトは強度が低い分、単調に感じやすいかもしれません。継続するためには、飽きない工夫が大切です。
- エンターテイメント
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音楽を聴く、ポッドキャストやオーディオブックを楽しむ、映画やドラマ、YouTubeを観るなど、Zwift画面以外にも楽しみを用意しましょう。
- ソーシャル機能の活用
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Zwift内のグループライドに参加したり、友達とミートアップ機能を使って一緒に走ったりすると、モチベーションを維持しやすくなります。
補給の重要性
たとえ低強度でも、長時間(特に90分以上)のライドではエネルギーと水分が失われます。
- 水分補給
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こまめにボトルから水分を摂取しましょう。
- エネルギー補給
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60分を超えるあたりから、必要に応じてエナジージェルや補給食などで糖質を補給することを検討しましょう。
体調管理
- 無理は禁物
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疲労が溜まっていると感じる時や、体調が優れない時は、無理に長時間乗らず、強度を下げたり、休息したりしましょう。
- トレーニングバランス
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Zone 2だけでなく、時には高強度のトレーニング(Zone 4やZone 5)も組み合わせることで、総合的な走力向上が期待できます(ただし、やりすぎは禁物です)。休息日もしっかり設けましょう。
まとめ
この記事では、Zwiftを活用した効果的なZone 2ワークアウトについて、その重要性から具体的な実践方法、継続のコツまで詳しく解説しました。
Zone 2トレーニングのポイント
- 持久力の土台作り
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長時間楽に走り続ける能力や、脂肪燃焼効率を高める上で非常に重要。
- 強度の把握
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FTPや最大心拍数を基に、自分のZone 2(会話ができる程度の強度)を知る。
- Zwiftでの実践方法
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- ワークアウトライブラリ: ERGモードで楽々実践。
- フリーライド: 好きなコースでペースを維持。
- カスタムワークアウト: 自分だけのメニューを作成。
- 効果を高めるコツ
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適切な時間(60分以上推奨)、飽きない工夫、補給、体調管理。
一見地味に思えるZone 2トレーニングですが、コツコツと継続することで、あなたのサイクリングパフォーマンスは着実向上していくはずです。Zwiftの便利な機能を活用し、楽しみながら持久力の土台を築き上げていきましょう。