SEO(検索エンジン最適化)で成果を出すためには、キーワード選定が最初の、そして最も重要なステップの一つです。適切なキーワードを選ばなければ、どれだけ質の高いコンテンツを作っても、ターゲットとするユーザーに届けることは難しくなります。
この記事では、SEO初心者の方からWeb担当者、ブロガー、マーケターの方まで、キーワード選定の基本的な考え方から、無料・有料ツールの具体的な使い方、そして選定したキーワードをどのようにコンテンツに活かすかまで、網羅的に解説します。「どこから手をつければいいかわからない」「ツールを使っているけど、うまくキーワードを選べない」といった悩みをお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
なぜキーワード選定がSEOの「土台」なのか?
キーワード選定は、家づくりにおける基礎工事のようなものです。ここがしっかりしていないと、その上にどんな立派な家(コンテンツ)を建てても安定しません。
検索エンジンとユーザー行動の理解
ユーザーは、自分の「悩み」「疑問」「知りたいこと」を解決するために、検索エンジンにキーワードを入力します。検索エンジンは、そのキーワードを手がかりに、ユーザーが求めているであろう情報を検索結果として表示します。
つまり、適切なキーワードを選定するということは、ユーザーのニーズと自社のコンテンツを結びつける「架け橋」を作る作業なのです。この架け橋がなければ、ユーザーはあなたのサイトにたどり着けません。
キーワード選定を怠るリスク
もしキーワード選定を軽視したり、間違った方法で行ったりすると、以下のようなリスクが生じます。
- 誰にも検索されない記事を作ってしまう
- ユーザーが検索しないキーワードで対策しても、アクセスは生まれません。
- ターゲットではないユーザーばかり集めてしまう
- アクセスはあっても、自社の商品やサービスに関心のないユーザーばかりでは、成果(問い合わせ、購入など)には繋がりません。
- 競合が激しすぎるキーワードで消耗してしまう
- 大企業などがひしめく競争の激しいキーワードばかり狙っても、上位表示は難しく、時間と労力が無駄になる可能性があります。
これらのリスクを避け、効率的にSEOで成果を出すために、正しいキーワード選定の知識が不可欠なのです。
キーワード選定の基本的な考え方:3つのステップ
効果的なキーワード選定は、以下の3つのステップで進めます。
Step 1: ターゲット顧客(ペルソナ)の明確化
まず、「誰に」情報を届けたいのかを具体的にイメージします。
- どんな人か?:
- 年齢、性別、職業、家族構成、住んでいる地域、興味関心などを具体的に設定します(ペルソナ設定)。
- どんな「悩み」「疑問」「欲求」を持っているか?:
- そのペルソナが、日常でどんなことに困っていて、何を知りたがっていて、何を解決したい(手に入れたい)と考えているかを深く掘り下げます。
例えば、「都内在住、30代、共働きで小学生の子供がいる女性。毎日の献立を考えるのが大変で、時短レシピを探している」といった具合です。この顧客視点を持つことで、より具体的でニーズに合ったキーワード候補が浮かび上がってきます。
Step 2: ユーザーの「検索意図」を理解する
ユーザーが特定のキーワードで検索する背景には、必ず何らかの「目的」があります。これを検索意図(Search Intent)と呼びます。検索意図を理解することは、ユーザーが本当に求めている情報を提供するために極めて重要です。
検索意図は、大きく以下の4つのタイプに分類されます。
- Know(知りたい):
- 情報収集が目的。「〇〇 とは」「〇〇 方法」「〇〇 理由」「〇〇 メリット」など。
⇒ 解説記事、ノウハウ記事が有効。
- 情報収集が目的。「〇〇 とは」「〇〇 方法」「〇〇 理由」「〇〇 メリット」など。
- Go(行きたい):
- 特定の場所やウェブサイトにアクセスしたい。「〇〇(店舗名)」「〇〇(サイト名)」「〇〇 ログイン」など。
⇒ 主に指名検索。サイトの信頼性が重要。
- 特定の場所やウェブサイトにアクセスしたい。「〇〇(店舗名)」「〇〇(サイト名)」「〇〇 ログイン」など。
- Do(したい):
- 何か具体的な行動を起こしたい。「〇〇 やり方」「〇〇 ダウンロード」「〇〇 申し込み」「〇〇 予約」など。
⇒ 手順解説、サービス紹介、申し込みページが有効。
- 何か具体的な行動を起こしたい。「〇〇 やり方」「〇〇 ダウンロード」「〇〇 申し込み」「〇〇 予約」など。
- Buy(買いたい):
- 商品やサービスの購入を検討している。「〇〇 通販」「〇〇 おすすめ」「〇〇 比較」「〇〇 価格」など。
⇒ 商品ページ、比較記事、レビュー記事が有効。
- 商品やサービスの購入を検討している。「〇〇 通販」「〇〇 おすすめ」「〇〇 比較」「〇〇 価格」など。
選定しようとしているキーワードがどの検索意図を持つのかを見極め、その意図に合致したコンテンツを作成する必要があります。
Step 3: キーワードの種類を把握する
キーワードは、その検索ボリュームや具体性によって、主に3つの種類に分けられます。
- ビッグキーワード(Short-tail):
- 例:「SEO」「マーケティング」「レシピ」
- 検索ボリューム:非常に多い
- 競合:非常に多い(上位表示難易度:高)
- 検索意図:曖昧なことが多い
- コンバージョン率:低い傾向
- ミドルキーワード(Middle-tail):
- 例:「SEO 内部対策」「コンテンツマーケティング 事例」「時短レシピ 簡単」
- 検索ボリューム:中程度
- 競合:中程度(上位表示難易度:中)
- 検索意図:やや具体的
- コンバージョン率:中程度
- ロングテールキーワード(Long-tail):
- 例:「SEO 初心者 キーワード選定 無料ツール」「BtoB コンテンツマーケティング KPI設定」「鶏むね肉 時短レシピ 10分以内」
- 検索ボリューム:少ない
- 競合:少ない(上位表示難易度:低)
- 検索意図:非常に具体的
- コンバージョン率:高い傾向
SEOを始めたばかりのサイトや、ニッチな分野を扱うサイトは、まずロングテールキーワードから対策を始め、徐々にミドル、ビッグキーワードへと広げていく戦略が有効です。
キーワード候補を洗い出す具体的な方法
基本的な考え方を理解したら、次は実際にキーワード候補をリストアップしていきます。
自分の頭で考える(ブレインストーミング)
まずは、設定したペルソナになりきって、どんな言葉で検索するかを想像してみましょう。自社の商品やサービスに関連する言葉、顧客が抱えていそうな悩みや疑問を、思いつく限り書き出します。
Google検索を活用する
Google検索自体が、キーワードの宝庫です。
- サジェストキーワード:
- 検索窓にキーワードを入力し始めると表示される候補。「〇〇 とは」「〇〇 やり方」など、ユーザーがよく検索する組み合わせが見つかります。
- 関連キーワード:
- 検索結果ページの下部に表示される「他のキーワード」や「関連性の高い検索」。「〇〇 比較」「〇〇 おすすめ」など、関連性の高い別のキーワードが見つかります。
- 他の人はこちらも質問(PAA: People Also Ask):
- 検索結果の途中に表示される、関連する質問形式のキーワード。ユーザーの具体的な疑問を知るヒントになります。
競合サイトを分析する
狙いたいキーワードで既に上位表示されている競合サイトは、格好の参考資料です。
- どのようなキーワードをタイトルや見出しに使っているか?
- どのようなコンテンツ構成になっているか?
- どのような切り口で情報を提供しているか?
専用ツール(後述)を使えば、競合サイトがどのようなキーワードでアクセスを集めているかを効率的に調査できます。
Q&AサイトやSNSを活用する
Yahoo!知恵袋や教えて!gooなどのQ&Aサイトには、ユーザーのリアルな悩みや疑問が投稿されています。関連する質問を検索することで、ユーザーが実際に使っている言葉遣いや、潜在的なニーズを発見できます。
また、TwitterなどのSNSで関連キーワードやハッシュタグを検索すると、トレンドやユーザーの関心事が見えてくることがあります。
無料・有料キーワード選定ツールの使い方【実践編】
キーワードの洗い出しや分析を効率化し、客観的なデータを得るためには、ツールの活用が不可欠です。ここでは、代表的な無料ツールと有料ツールを紹介します。
なぜツールを使うべきか?
- 効率的なキーワード発見:
- 人力では見つけきれない多くのキーワード候補を発見できます。
- 客観的データの取得:
- 各キーワードの検索ボリューム(月間検索回数)や競合性(上位表示の難易度)といったデータを数値で把握できます。
- アイデアの拡張:
- 軸となるキーワードから、関連性の高いキーワードを効率的に広げられます。
おすすめ無料ツールとその使い方
まずは無料で使えるツールから試してみましょう。
- Googleキーワードプランナー:
- 使い方:
- Google広告のアカウントがあれば無料で利用できます(広告出稿は不要)。「新しいキーワードを見つける」に軸となるキーワードを入力すると、関連キーワード候補とその月間平均検索ボリュームの範囲(例: 100~1000)、競合性(低・中・高)が表示されます。
- ポイント:
- 検索ボリュームは具体的な数値ではなく範囲表示になることが多いですが、候補の洗い出しや大まかな需要把握に役立ちます。元々は広告出稿用のツールなので、表示される競合性は広告の競合性を示します。
- 使い方:
- Googleトレンド:
- 使い方:
- キーワードを入力すると、そのキーワードの検索人気度が時間経過と共にどのように変化しているかをグラフで確認できます。期間を指定したり、複数のキーワードを比較したりすることも可能です。
- ポイント:
- 季節性の高いキーワード(例:「クリスマス プレゼント」「確定申告」)の需要期を把握したり、注目度が上がっているトレンドキーワードを発見したりするのに役立ちます。
- 使い方:
- Google Search Console:
- 使い方:
- 自分のサイトを登録すると、「検索パフォーマンス」レポートで、実際にユーザーがどのようなキーワードで検索して自分のサイトにたどり着いたか、表示回数、クリック数、平均掲載順位などを確認できます。
- ポイント:
- 想定していなかったキーワードでの流入を発見したり、表示回数は多いのにクリック率が低いキーワード(=タイトルやディスクリプションの改善が必要)を見つけたり、既存コンテンツのリライトや新規コンテンツ作成のヒントを得られます。
- 使い方:
- ラッコキーワード:
- 使い方:
- 無料で利用できるキーワードリサーチツール。キーワードを入力すると、Googleサジェスト、関連キーワード、「教えて!goo」「Yahoo!知恵袋」の関連Q&Aなどを一括で大量に取得できます。
- ポイント:
- アイデア出しの初期段階で、網羅的に関連キーワードを洗い出すのに非常に便利です。
- 使い方:
おすすめ有料ツールとその特徴(概要紹介)
より詳細な分析や高度な機能が必要な場合は、有料ツールの導入も検討しましょう。
- Ahrefs (エイチレフス):
- 世界的に有名なSEO分析ツール。キーワード調査、競合サイト分析、被リンク分析など、機能が豊富でデータ精度も高いとされています。本格的にSEOに取り組む企業に人気です。
- SEMrush (セムラッシュ):
- Ahrefsと並んで人気の多機能ツール。キーワード調査、競合分析に加え、広告分析(リスティング広告)やSNS分析機能も充実しています。
- Ubersuggest (ウーバーサジェスト):
- 無料プランや比較的安価な有料プランがあり、個人や中小企業でも導入しやすいツール。キーワード提案、コンテンツアイデア、競合分析などの基本機能が揃っています。
有料ツールは高機能ですが、まずは無料ツールを使いこなし、必要に応じて導入を検討するのが良いでしょう。
5. 「勝てる」キーワードを選定するための判断基準
洗い出したキーワード候補の中から、実際にコンテンツを作成するキーワードを選定していきます。その際の判断基準となる指標を解説します。
検索ボリューム (Search Volume)
- 意味:
- そのキーワードが月間平均でどれくらい検索されているかを示す数値。
- 判断:
- 多ければ多いほど潜在的なアクセス数は増えますが、その分競合も多くなります。自社サイトの現状(ドメインパワーやリソース)に合わせて、適切なボリュームのキーワードを選びます。最初は月間数十~数百程度のロングテールキーワードから狙うのがおすすめです。ツールで確認できます。
キーワード難易度 (Keyword Difficulty)
- 意味:
- そのキーワードで検索結果の上位に表示されることの難易度を示す指標。競合サイトの強さ(ドメインパワー、コンテンツの質、被リンク数など)によって決まります。
- 判断:
- 有料ツールなどでスコア化されていることが多いですが、ツールによって基準は異なります。あくまで目安とし、実際に検索結果上位のサイトを見て、自社でも太刀打ちできそうかを確認することが重要です。難易度が高すぎるキーワードは避け、現実的に上位表示を狙えるキーワードを選びましょう。
関連性 (Relevance)
- 意味:
- そのキーワードが、自社の提供する情報、商品、サービスとどれだけ関連しているか。また、ユーザーの検索意図とコンテンツ内容が合致しているか。
- 判断:
- 最も重要な基準の一つです。検索ボリュームや難易度だけで選ばず、自社のターゲット顧客が検索し、かつ自社が価値を提供できるキーワードを選びましょう。検索意図とズレたコンテンツを作っても、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。
クリック率 (CTR – Click-Through Rate) の考慮
- 意味:
- 検索結果に表示された際に、どれくらいの割合でクリックされるか。
- 判断:
- 検索ボリュームが多くても、検索結果画面(SERPs)に広告が多く表示されていたり、強調スニペット(検索結果上部の回答ボックス)で答えが完結していたりすると、実際のクリック率は低くなることがあります。キーワードを選定する際は、実際にそのキーワードで検索してみて、SERPsの状況を確認することも大切です。
ビジネスへの貢献度 (Commercial Value)
- 意味:
- そのキーワードで上位表示され、アクセスを集めた結果、最終的なビジネス目標(問い合わせ、資料請求、商品購入、メルマガ登録など)にどれだけ繋がりそうか。
- 判断:
- 特に企業サイトの場合、単にアクセスを集めるだけでなく、ビジネス成果に繋がるキーワードを優先的に選定することが重要です。「Buy」や「Do」の検索意図を持つキーワードは、一般的にビジネス貢献度が高い傾向があります。
これらの指標を総合的に評価し、「検索ボリューム」「難易度」「関連性」「ビジネス貢献度」のバランスが良い、自社にとって最適なキーワードを選定していきます。
選定したキーワードをコンテンツに活用する方法
キーワードを選定したら、次はそのキーワードを効果的にコンテンツに盛り込むステップです。
1コンテンツ=1キーワード(+関連キーワード)が基本
一つの記事やページでは、メインターゲットとするキーワードを一つ決め、そのキーワードの検索意図に深く答えることを意識します。関連性の高いキーワード(サジェストや関連キーワードで見つかったもの)も自然な形で含めることで、より網羅的でSEOに強いコンテンツになります。
主要な設置場所
選定したキーワードは、以下の場所に適切に配置することを意識しましょう。
- タイトルタグ (
<title>
):- 検索結果に表示される最も重要な要素。ユーザーの検索意図に合致し、クリックしたくなるような魅力的なタイトルに、キーワードを自然に含めます(なるべく前方に入れるのが効果的)。
- 見出しタグ (
<h1>
,<h2>
,<h3>
…):- 記事の構成を分かりやすく示す役割。
<h1>
は記事タイトル(通常1つ)、<h2>
以下で章や節を構成し、各見出しに関連するキーワードを自然に含めます。
- 記事の構成を分かりやすく示す役割。
- 本文中:
- 最も重要なのは、ユーザーにとって分かりやすく価値のある文章を書くことです。その上で、キーワードや関連語、共起語(キーワードと一緒によく使われる言葉)を不自然にならない程度に含めます。キーワードを無理に詰め込む「キーワードスタッフィング」は、ペナルティの対象となるため絶対に避けましょう。
- メタディスクリプション:
- 検索結果のタイトル下に表示される説明文。直接的なランキング要因ではありませんが、クリック率に大きく影響します。キーワードを含めつつ、記事の内容を要約し、ユーザーのクリックを促す魅力的な文章を作成します。
- URL(パーマリンク):
- 可能であれば、コンテンツ内容を表す簡潔な英単語やローマ字でキーワードを含めます。(例:
/keyword-selection-tools
)
- 可能であれば、コンテンツ内容を表す簡潔な英単語やローマ字でキーワードを含めます。(例:
- 画像のalt属性:
- 画像が表示されなかった場合に代替テキストとして表示されたり、スクリーンリーダーが読み上げたりするテキスト。画像の内容を具体的に説明し、関連するキーワードを記述します。
ユーザーファーストを忘れずに
キーワードを意識することは重要ですが、最も大切なのは常に「ユーザーファースト」であることです。キーワードを詰め込むことだけを考えて読みにくくなった文章は、ユーザー体験を損ない、結果的にSEO評価も下がってしまいます。あくまで自然で、ユーザーにとって価値のある、分かりやすいコンテンツを作成することを最優先しましょう。
まとめ
キーワード選定は、SEO戦略の根幹をなす非常に重要なプロセスです。
- なぜ重要か:
- ユーザーニーズと自社コンテンツを結びつける架け橋であり、SEOの土台となるため。
- 基本的な考え方:
- ターゲット顧客を理解し、検索意図を把握し、キーワードの種類(ロングテールなど)を意識する。
- ツールの活用:
- Googleキーワードプランナーなどの無料ツールから始め、効率的に候補を発見し、客観的なデータ(検索ボリューム、難易度)を取得する。
- 選定基準:
- 検索ボリューム、難易度、関連性、ビジネス貢献度などを総合的に判断する。
- 活用方法:
- タイトル、見出し、本文などに自然な形でキーワードを盛り込み、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを作成する。
キーワード選定は一度行ったら終わりではありません。Google Search Consoleなどで定期的に効果測定を行い、ユーザーの反応や検索トレンドの変化に合わせて、キーワードの見直しやコンテンツの改善を継続していくことが、長期的なSEO成功の鍵となります。
この記事を参考に、まずは無料ツールを使いながら、あなたのサイトに最適なキーワードを見つける第一歩を踏み出してみてください。