【Rails】Serviceオブジェクト入門｜複雑なビジネスロジックを整理する

2025年3月27日2025年4月5日

Ruby on Rails開発において、コントローラーやモデルが複雑化し、保守性が低下するという課題に直面することがあります。特に、複数のモデル操作や外部連携など、単純なCRUDではないビジネスロジックが増えると顕著になります。

この課題に対する有効な解決策の一つが「Serviceオブジェクト」です。これは特定のビジネスロジックを専用クラスに分離する設計パターンで、コードの整理と保守性向上に役立ちます。この記事では、Serviceオブジェクトの基本から実践的な使い方までを、適度な詳細さで解説します。

Serviceオブジェクトとは？ – ビジネスロジックの専門家

Serviceオブジェクトは、特定のビジネスロジック（アプリケーション固有の処理）を実行する責務を持つクラスです。MVCの各層（Model, View, Controller）には収まりきらない、以下のような処理をカプセル化します。

複数のモデルにまたがる一連の操作
外部APIとの通信処理
複雑なデータ計算や変換
一括処理やバッチ処理

これらのロジックをServiceオブジェクトに分離することで、モデルはデータ関連の責務に、コントローラーはリクエスト処理に集中でき、関心の分離が促進されます。

Serviceオブジェクト導入のメリット

Serviceオブジェクトを導入する主なメリットは以下の通りです。

モデル/コントローラーのスリム化: 複雑なロジックが移動するため、Fat Controller/Modelを防ぎ、コードの見通しが良くなります。
責務の明確化: 「この処理は〇〇Serviceを見れば良い」と、担当箇所が明確になり、コードの理解が容易になります。
テスト容易性の向上: Serviceオブジェクト単体でビジネスロジックのテストがしやすくなり、品質向上とリファクタリングの安心感に繋がります。
コードの再利用性向上: 同じビジネスロジックを複数の箇所（コントローラー、バッチなど）から呼び出して再利用できます。

RailsへのServiceオブジェクト導入手順

特別な設定は不要で、シンプルなRubyクラスとして実装します。

① ディレクトリ作成

慣習として app/services ディレクトリを作成し、Serviceクラスファイルを配置します。

mkdir app/services

② Serviceクラス作成

Serviceクラスは通常、初期化メソッド (initialize) と実行メソッド (call など) を持ちます。

# app/services/simple_order_processor.rb
class SimpleOrderProcessor
  def initialize(user, params)
    @user = user
    @params = params # フォームからのパラメータなどを想定
    @errors = []
  end

  def call
    # ここに注文処理に関連するビジネスロジックを記述
    # 例: 在庫確認、注文レコード作成、決済処理呼び出しなど
    if process_order_logic
      return { success: true } # 成功時は true や関連オブジェクトを返す
    else
      return { success: false, errors: @errors } # 失敗時はエラー情報を返す
    end
  rescue => e
    Rails.logger.error("Order processing failed: #{e.message}")
    return { success: false, errors: ["予期せぬエラーが発生しました"] }
  end

  private

  # 内部的な処理ロジックの例 (簡略化)
  def process_order_logic
    # ... 在庫チェック ...
    unless stock_ok?
      @errors << "在庫不足です"
      return false
    end

    # ... 注文作成 (トランザクション考慮) ...
    order = Order.create(user: @user, product_id: @params[:product_id]) # 例
    unless order.persisted?
      @errors.concat(order.errors.full_messages)
      return false
    end

    # ... 決済処理呼び出し (成功したと仮定) ...
    true
  end

  def stock_ok?
    # 在庫チェックの実装 (仮)
    true
  end
end

ポイント:

initializeで必要なオブジェクトやデータをインスタンス変数に格納します。
callメソッドが処理の入口となり、一連のビジネスフローを実行します。
処理結果（成功/失敗、エラーメッセージなど）をハッシュなどで返却します。
rescueで予期せぬエラーを捕捉します。

③ コントローラーから呼び出す

コントローラーはServiceオブジェクトを初期化し、callメソッドを呼び出して結果を受け取ります。

# app/controllers/orders_controller.rb
class OrdersController < ApplicationController
  def create
    # Serviceオブジェクトを呼び出す
    result = SimpleOrderProcessor.new(current_user, order_params).call

    # 結果に応じて処理を分岐
    if result[:success]
      redirect_to user_orders_path, notice: '注文が完了しました。' # 例: 注文一覧へ
    else
      flash.now[:alert] = "注文処理に失敗しました: #{result[:errors].join(', ')}"
      render :new, status: :unprocessable_entity # 例: 注文フォームを再表示
    end
  end

  private
  def order_params
    params.require(:order).permit(:product_id, :quantity) # 例
  end
end

コントローラーはビジネスロジックの詳細を知る必要がなく、シンプルになります。

実践例：外部API連携 (簡略版)

外部APIからデータを取得し、DBに保存するServiceの例です。コードを簡潔に示します。

# app/services/simple_api_importer.rb
require 'net/http'
require 'json'

class SimpleApiImporter
  API_ENDPOINT = '[https://api.example.com/items](https://api.example.com/items)'

  def call
    # API呼び出し (エラーハンドリング簡略化)
    uri = URI(API_ENDPOINT)
    response = Net::HTTP.get(uri)
    items_data = JSON.parse(response)

    # データ保存 (エラーハンドリング簡略化)
    items_data.each do |item_data|
      Item.update_or_create_by(external_id: item_data['id'], defaults: { name: item_data['name'] })
    end
    return { success: true }

  rescue JSON::ParserError, Net::HTTPError, SocketError => e # 主要なエラーを捕捉
    Rails.logger.error("API Import failed: #{e.message}")
    return { success: false, error: "API連携エラー" }
  rescue => e
    Rails.logger.error("Unexpected import error: #{e.message}")
    return { success: false, error: "予期せぬエラー" }
  end
end

ポイント: