Gitワークフローの選び方とベストプラクティス|チーム開発を効率化する戦略

チームでGitを使って開発していると、「どのブランチ戦略を採用すべきか」「コンフリクトを減らすにはどうすればいいか」といった悩みに直面することがありますよね。適切なワークフローを選ぶことで、マージの混乱を防ぎ、コードレビューを効率化し、継続的デリバリーを実現できます。

この記事では、主要なGitワークフロー(Trunk-Based Development、GitHub Flow、GitFlow)の特徴を比較し、チーム規模やプロジェクト特性に応じた選び方を解説します。2025年現在のベストプラクティスを押さえて、チーム開発の生産性を高めましょう。

目次

Gitワークフローとは

Gitワークフローとは、チームでGitを使用してコード管理を行う際の作業手順とブランチ運用戦略のことです。どのブランチをいつ作成し、どこにマージするかというルールを定めることで、複数の開発者が同時に作業しても混乱を避けられます。

適切なワークフローを選択することで得られるメリットは大きく3つあります。まず、コンフリクトの発生頻度を大幅に削減できます。次に、コードレビューのプロセスが明確になり品質が向上します。そして、継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)との親和性が高まります。

ただし、最適なワークフローはプロジェクトの特性やチーム規模によって異なります。以下では主要な4つのワークフローを詳しく見ていきましょう。

主要なGitワークフロー

Trunk-Based Development

Trunk-Based Developmentは、開発者が単一の「trunk」(main/master)ブランチで協働するワークフローです。長期存続するブランチを作成せず、短期間のフィーチャーブランチ(最長2日)のみを使用します。

このワークフローの核心は「小さく頻繁なコミット」にあります。開発者は1日に複数回、trunkにコードをマージします。未完成の機能はFeature Flagsを使って本番環境への露出を制御するため、開発途中のコードでもマージ可能です。

# フィーチャーブランチを作成
git checkout -b feature/add-login main

# 作業してコミット(小さな単位で)
git add .
git commit -m "feat: ログインフォームのUI実装"

# 頻繁にmainにマージ(1〜2日以内)
git checkout main
git pull origin main
git merge feature/add-login
git push origin main

# ブランチを削除
git branch -d feature/add-login

GoogleやFacebookなどの大規模組織でも採用されており、35,000人以上の開発者によるモノレポ運用の実績があります。DevOps文化が成熟したチームには最も推奨されるワークフローです。

ただし、強力なCI/CDパイプラインと充実した自動テストが前提条件となります。Feature Flagsの仕組みを導入する必要もあり、経験の浅いチームにはハードルが高い場合があります。

GitHub Flow

GitHub Flowは、mainブランチとフィーチャーブランチのみを使用するシンプルなワークフローです。GitHub自身がサイトポリシーやドキュメントの管理にこのフローを採用しています。

ワークフローは6つのステップで構成されます。まずmainからフィーチャーブランチを作成し、変更を加えてコミットします。その後リモートにプッシュし、プルリクエストを作成してレビューを受けます。承認後にmainへマージし、フィーチャーブランチを削除します。

# フィーチャーブランチを作成
git checkout -b feature/user-authentication main

# 変更を加えてコミット
git add .
git commit -m "feat: ユーザー認証機能を追加"

# リモートにプッシュ
git push -u origin feature/user-authentication

# GitHubでプルリクエストを作成
gh pr create --title "ユーザー認証機能を追加" --body "ログイン・ログアウト機能を実装"

# レビュー・承認後にマージ
gh pr merge --squash

# ローカルブランチを削除
git checkout main
git pull origin main
git branch -d feature/user-authentication

GitFlowと比較して非常にシンプルで、ブランチ管理のオーバーヘッドが少ないのが特徴です。小規模チーム(5名程度)やスタートアップ、オープンソースプロジェクトに適しています。

GitFlow

GitFlowは、Vincent Driessenが2010年に提唱した構造化されたブランチモデルです。5種類のブランチを使用し、それぞれに明確な役割を定義します。

ブランチ役割派生元マージ先
main本番リリース履歴
develop次期リリース統合mainmain
feature/*新機能開発developdevelop
release/*リリース準備developmain, develop
hotfix/*緊急バグ修正mainmain, develop
# 新機能の開発
git checkout -b feature/payment develop
# 作業後
git checkout develop
git merge --no-ff feature/payment
git branch -d feature/payment

# リリース準備
git checkout -b release/1.2.0 develop
# バグ修正、バージョン更新後
git checkout main
git merge --no-ff release/1.2.0
git tag -a v1.2.0 -m "Version 1.2.0"
git checkout develop
git merge --no-ff release/1.2.0
git branch -d release/1.2.0

# 緊急バグ修正
git checkout -b hotfix/security-patch main
# 修正後
git checkout main
git merge --no-ff hotfix/security-patch
git tag -a v1.2.1 -m "Security patch"
git checkout develop
git merge --no-ff hotfix/security-patch
git branch -d hotfix/security-patch

複数バージョンのサポートに対応できる構造化されたアプローチが強みです。しかし2020年にVincent Driessen自身が「Webアプリケーションには複雑すぎる」と認め、継続的デリバリー環境ではGitHub Flowを推奨しています。

明示的なバージョン管理が必要なソフトウェアや、複数バージョンの同時サポートが必要なプロジェクトには依然として有効な選択肢です。

Feature Branch Workflow

Feature Branch Workflowは、すべての機能開発を専用のブランチで行うシンプルなワークフローです。GitFlowの簡易版とも言え、mainとfeatureブランチのみを使用します。

# 機能ブランチを作成
git checkout -b feature/search-function main

# 開発作業
git add .
git commit -m "feat: 検索機能のバックエンド実装"
git commit -m "feat: 検索機能のフロントエンド実装"

# mainにマージ
git checkout main
git pull origin main
git merge feature/search-function
git push origin main
git branch -d feature/search-function

複数の開発者が特定の機能に取り組みながら、メインのコードベースを安定した状態に保てます。プルリクエストを通じたコードレビューと組み合わせることで、より効果を発揮します。

ワークフロー比較

3つの主要ワークフローを比較すると、プロジェクトに適した選択がしやすくなります。

項目Trunk-BasedGitHub FlowGitFlow
複雑さ
ブランチ数1(+短期フィーチャー)2種類5種類
リリース方式継続的継続的スケジュール
推奨チーム規模全規模小〜中中〜大
CI/CD親和性非常に高い高い低い
複数バージョン対応困難困難容易
学習コスト

継続的デリバリーを実践したい場合はTrunk-Based DevelopmentまたはGitHub Flowが適しています。一方、パッケージソフトウェアのように明示的なバージョン管理が必要な場合はGitFlowが有効です。

ベストプラクティス

どのワークフローを採用しても、以下のプラクティスは共通して重要です。

ブランチ命名規則

意味のある短い説明的な名前を使用しましょう。チーム内で一貫した命名規則を定め、遵守することが重要です。

# 推奨される命名パターン
feature/user-authentication    # 新機能
fix/login-timeout              # バグ修正
hotfix/security-patch          # 緊急修正
docs/api-reference             # ドキュメント更新
refactor/database-layer        # リファクタリング

プレフィックスを統一することで、ブランチの目的が一目でわかるようになります。また、関連するIssue番号を含めると追跡が容易になります(例: feature/123-user-auth)。

コミットメッセージ

各コミットは「孤立した完全な変更」を含めるべきです。何を変更したかだけでなく、なぜ変更したかを説明しましょう。Conventional Commits形式の採用を推奨します。

# Conventional Commits形式
feat: ユーザー認証機能を追加
fix: ログインタイムアウトの問題を修正
docs: APIリファレンスを更新
style: コードフォーマットを統一
refactor: データベース接続処理を改善
test: ユーザー認証のテストを追加
chore: 依存パッケージを更新

この形式に従うことで、CHANGELOGの自動生成やセマンティックバージョニングの自動化が可能になります。

プルリクエストの活用

プルリクエストを通じたコードレビューはコード品質向上に不可欠です。ソロ開発者であっても、変更履歴の記録としてプルリクエストを作成することが推奨されます。

# GitHub CLIでプルリクエストを作成
gh pr create \
  --title "feat: ユーザー認証機能を追加" \
  --body "## 概要
ログイン・ログアウト機能を実装しました。

## 変更内容
- JWTを使用した認証処理
- ログインフォームのUI
- セッション管理

## テスト
- 単体テスト追加済み
- 手動テスト完了"

レビューコメントには迅速に対応し、承認後にマージします。マージ後はフィーチャーブランチを削除して、リポジトリをクリーンに保ちましょう。

mainブランチの保護

mainブランチへの直接プッシュを禁止し、プルリクエスト経由でのマージのみを許可することを推奨します。GitHubやGitLabでブランチ保護ルールを設定しましょう。

# .github/workflows/ci.yml の例
name: CI
on:
  pull_request:
    branches: [main]
jobs:
  test:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4
      - name: Run tests
        run: npm test
      - name: Run linter
        run: npm run lint

必須のステータスチェック(CI/テスト)を設定し、マージ前に自動テストが通過することを要求します。これにより、壊れたコードがmainに入ることを防げます。

どのワークフローを選ぶべきか

Trunk-Based Developmentを選ぶ場合

継続的デリバリーを実践したいチームや、高速なリリースサイクルを求めるプロジェクトに最適です。DevOps文化が根付いている組織で効果を発揮します。

前提条件として、強力なCI/CDパイプライン、充実した自動テスト、Feature Flagsの仕組みが必要です。これらの基盤が整っていない場合は、まずGitHub Flowから始めることを推奨します。

GitHub Flowを選ぶ場合

シンプルさを重視する小規模チームやスタートアップに向いています。オープンソースプロジェクトや単一バージョンのWebアプリケーションにも適しています。

最初のワークフローとして導入しやすく、チームの成長に応じて他のワークフローへ移行することも可能です。迷ったらまずGitHub Flowから始めてみましょう。

GitFlowを選ぶ場合

バージョン番号を明示的に管理するソフトウェア(v1.0、v2.0など)に適しています。複数バージョンの同時サポートが必要な製品や、定期的なリリースサイクルを持つ大規模チームで効果を発揮します。

ただし、Webアプリケーションで継続的デプロイを行う場合は、GitFlow提唱者自身がGitHub Flowを推奨していることを覚えておきましょう。

ツールと自動化

git-flow拡張

GitFlowを採用する場合、git-flow拡張を使うとブランチ操作が簡単になります。オリジナルのnvie/gitflowはメンテナンス終了していますが、Tower社が開発したgit-flow-nextが後継として推奨されています。

# git-flowの初期化
git flow init

# フィーチャーブランチの開始
git flow feature start user-authentication

# フィーチャーブランチの完了
git flow feature finish user-authentication

# リリースブランチの開始
git flow release start 1.2.0

# リリースブランチの完了
git flow release finish 1.2.0

GitHub Actions

GitHub Actionsを使うと、ワークフローの自動化が可能です。ブランチ保護ルール、自動テスト、デプロイの自動化などを設定できます。

# .github/workflows/release.yml
name: Release
on:
  push:
    tags:
      - 'v*'
jobs:
  release:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4
      - name: Build
        run: npm run build
      - name: Create Release
        uses: softprops/action-gh-release@v1
        with:
          files: dist/*

まとめ

Gitワークフローの選択は、チーム開発の効率に大きく影響します。2025年現在、Trunk-Based Developmentが最もモダンなベストプラクティスとして推奨されていますが、チーム規模やプロジェクト特性に応じて最適な選択は異なります。

小規模チームやこれから始めるプロジェクトには、シンプルなGitHub Flowがおすすめです。継続的デリバリーを本格的に実践したい場合はTrunk-Based Developmentへ移行し、複数バージョンの管理が必要な場合はGitFlowを検討しましょう。

どのワークフローを選んでも、ブランチ命名規則、コミットメッセージの統一、プルリクエストの活用、mainブランチの保護といったベストプラクティスは共通して重要です。まずはチームに合ったワークフローを選び、運用しながら改善していくことをおすすめします。

参考リンク

Git公式のブランチワークフローガイドでは、Long-Running BranchesとTopic Branchesの概念が詳しく解説されています。GitHub公式ドキュメントではGitHub Flowの手順が段階的に説明されており、初心者にも分かりやすい内容です。

Atlassianのチュートリアルシリーズでは各種ワークフローの比較が網羅的にまとめられています。Trunk-Based Developmentについてはtrunkbaseddevelopment.comが専門サイトとして詳細な情報を提供しています。

GitFlowの原典はVincent Driessenの「A successful Git branching model」ですが、2020年の追記で著者自身が継続的デリバリー環境での限界を認めている点も参考になります。

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