はじめに:rbenvとは?なぜUbuntu開発で必要なのか?
UbuntuでRubyを使った開発を行う際、プロジェクトごとに異なるRubyバージョンを使用したい、あるいは最新のRubyバージョンを試したい、といった場面に直面することがよくあります。システムに直接Rubyをインストールする方法(apt
など)では、複数バージョンの管理が煩雑になりがちです。
そこで登場するのがrbenvです。rbenvは、シンプルで信頼性の高いRubyバージョン管理ツールです。rbenvを使うことで、以下のようなメリットがあります。
- 複数バージョンの共存
-
システムを汚さずに、複数のRubyバージョンを簡単にインストールし、切り替えることができます。
- プロジェクトごとのバージョン指定
-
ディレクトリごとに使用するRubyバージョンを固定できるため、チーム開発や異なるプロジェクトでの環境差異を防ぎます。
- グローバルバージョンの設定
-
システム全体でデフォルトとして使用するRubyバージョンを指定できます。
この記事では、Ubuntu(特にLTS版である22.04や24.04などを想定)にrbenvをステップバイステップでインストールし、Ruby開発環境を整える手順を詳しく解説します。
前提条件
- Ubuntuがインストールされていること (デスクトップ版・サーバー版問わず)
sudo
権限を持つユーザーアカウント- 基本的なターミナル操作の知識
- インターネット接続 (依存パッケージやrbenv本体のダウンロードに必要)
Ubuntuへのrbenvインストール手順
それでは、具体的なインストール手順を見ていきましょう。ターミナルを開き、以下のコマンドを順番に実行していきます。
ステップ1:パッケージリストの更新
まず、システムのパッケージリストを最新の状態にします。これにより、依存関係を正しくインストールできます。
sudo apt update
ステップ2:依存関係のインストール
rbenv自体と、rbenvを使ってRubyをソースコードからビルドするために必要な開発ツールやライブラリをインストールします。
sudo apt install -y git curl libssl-dev libreadline-dev zlib1g-dev autoconf bison build-essential libyaml-dev libreadline-dev libncurses5-dev libffi-dev libgdbm-dev libdb-dev
ステップ3:rbenv本体のインストール
git
を使って、rbenvの公式リポジトリから本体をホームディレクトリ配下の.rbenv
ディレクトリにクローンします。
git clone https://github.com/rbenv/rbenv.git ~/.rbenv
.rbenv
という隠しディレクトリにインストールするのが一般的な慣習です。
ステップ4:シェル環境の設定 (PATHと初期化)
rbenvのコマンドを使えるようにPATH
環境変数を設定し、シェルの起動時にrbenvを初期化する設定を追加します。これにより、インストールしたRubyバージョンが適切に選択されるようになります(shims
という仕組み)。
お使いのシェルに合わせて以下の設定を行ってください。
- Bashユーザーの場合 (Ubuntuのデフォルト)
-
.bashrc
ファイルに以下の2行を追記します。echo 'export PATH="$HOME/.rbenv/bin:$PATH"' >> ~/.bashrc echo 'eval "$(rbenv init -)"' >> ~/.bashrc
- Zshユーザーの場合
-
.zshrc
ファイルに以下の2行を追記します。echo 'export PATH="$HOME/.rbenv/bin:$PATH"' >> ~/.zshrc echo 'eval "$(rbenv init -)"' >> ~/.zshrc
- 設定の反映
-
設定ファイルを変更したら、それを現在のシェルセッションに読み込ませる必要があります。以下のコマンドを実行するか、ターミナルを一度閉じて新しく開いてください。
exec $SHELL
ステップ5:rbenvインストールの確認
rbenvが正しくインストールされ、PATHが通っているかを確認します。
type rbenv
以下のような出力が表示されれば成功です。rbenv is a function
またはrbenv is /home/あなたのユーザー名/.rbenv/bin/rbenv
ステップ6:ruby-buildプラグインのインストール
rbenvだけではRubyのバージョンを”管理”できますが、”インストール”はできません。Rubyのインストール機能 (rbenv install
コマンド) を提供するのがruby-build
プラグインです。これをrbenvのプラグインディレクトリにインストールします。
mkdir -p "$(rbenv root)"/plugins
git clone https://github.com/rbenv/ruby-build.git "$(rbenv root)"/plugins/ruby-build
これでrbenvとその重要なプラグインであるruby-buildのインストールが完了しました!
rbenvを使ってRubyをインストールする
rbenvの準備ができたので、実際にRubyをインストールしてみましょう。
- 1.インストール可能なRubyバージョンの一覧表示
-
どのようなバージョンが利用可能か確認します。
rbenv install -l
- 希望のRubyバージョンをインストール
-
リストからインストールしたいバージョンを選び、
rbenv install
コマンドでインストールします。ここでは例として、安定版の3.4.3
をインストールします。(バージョン番号は適宜最新のものや必要なものに置き換えてください) -
rbenv install 3.4.3
- 使用するRubyバージョンの設定
-
インストールしたRubyバージョンをシステム全体、または特定のプロジェクトで使用するように設定します。
グローバル設定 (システム全体でのデフォルト)
rbenv global 3.4.3
-
ローカル設定 (現在のディレクトリのみ)
プロジェクトのルートディレクトリに移動してから実行します。
rbenv local 3.4.3
- Rubyバージョンの確認
-
設定したバージョンが正しく反映されているか確認します。
ruby -v
(例:
ruby 3.4.3 (2025-04-14 revision d0b7e5b6a0) +PRISM [x86_64-linux]
-
which ruby
-
(例:
/home/ユーザー名/.rbenv/shims/ruby
gem env home
(例:
/home/ユーザー名/.rbenv/versions/3.4.3/lib/ruby/gems/3.4.0
これらのコマンドで設定したバージョン情報が表示されれば、Ruby環境の準備は完了です!
まとめ
rbenvを使うことで、Ubuntu上でのRubyバージョン管理が非常に簡単かつ効率的になります。プロジェクトごとに異なるRubyバージョンを使い分けたり、最新のRubyを手軽に試したりできるため、開発効率の向上に繋がります。
今回紹介した手順に従えば、初心者の方でもスムーズにrbenvを導入し、快適なRuby開発環境をUbuntu上に構築できるはずです。ぜひrbenvを活用して、Rubyプログラミングを楽しんでください!