FTPがなかなか伸びない、レースで高強度の反復についていけない。そんな悩みを抱えているサイクリストに試してほしいのが、MyWhooshに収録されている40/20インターバルシリーズです。40秒間のハードエフォートと20秒間のリカバリーを繰り返すこのフォーマットは、VO2max(最大酸素摂取量)を効率的に向上させる方法として科学的にも支持されています。MyWhooshでは「40/20’s #1」「40/20’s #2」「40/20 Efforts」の3段階が用意されており、入門から上級まで無理なくステップアップできる設計になっています。この記事では、3つのワークアウトの構成と違いを詳しく解説し、自分に合ったレベルの選び方やトレーニング効果を最大化するコツまでお伝えします。
40/20インターバルとは
40/20インターバルは、40秒間の高強度エフォートと20秒間のアクティブリカバリーを交互に繰り返すマイクロインターバル形式のトレーニングです。ワーク(仕事)とレスト(休息)の比率が2:1に設定されている点が特徴で、この比率がVO2max向上に効果的であることが研究で示されています。
40秒間の高強度エフォートでは、有酸素システムに加えて無酸素システムも動員されます。続く20秒間のリカバリーでは心拍がわずかに下がり乳酸がある程度除去されますが、完全回復には至りません。この「不完全回復」がポイントで、セットが進むにつれて酸素摂取量が累積的に上昇し、VO2max領域に到達して維持されます。つまり、同じ強度で長時間一定ペースを刻むよりも、40/20形式の方がVO2max強度での総滞在時間を多く稼げるのです。
FTP(1時間維持可能な最大パワー)を基準とした強度設定により、各ライダーの体力レベルに合わせた適切な負荷がかかります。MyWhooshのERGモード(スマートトレーナーが自動で負荷を調整するモード)を使えば、ギアチェンジを気にすることなく設定されたパワーに集中できます。
MyWhoosh 40/20シリーズ:3つのワークアウト詳細
MyWhooshには40/20フォーマットのワークアウトが3つ用意されています。それぞれボリュームと強度が異なり、段階的にステップアップできる構成です。
40/20’s #1(入門レベル)

シリーズの入り口となるワークアウトで、総時間31分とコンパクトにまとまっています。Katie Zaferesによるビデオコーチング版(VOD)も用意されており、初めて40/20に取り組む方でもコーチの指導を聞きながら進められます。
| セグメント | 時間 | 強度(%FTP) |
|---|---|---|
| ウォームアップ | 3:00 | 50% |
| アクティベーション(×2) | 0:10 ON / 0:50 OFF | 200% / 50% |
| サブスレッショルド | 5:00 | 90% |
| リカバリー | 2:00 | 50% |
| メインセット1(×5) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 109% / 65% |
| リカバリー | 5:00 | 50% |
| メインセット2(×5) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 109% / 66% |
| クールダウン | 4:00 | 50% |
まずアクティベーションとして10秒間のスプリント(200% FTP)を2本こなし、神経系を活性化させてからメインセットに入ります。メインセットは109% FTPで40秒、65% FTPで20秒のインターバルを5本×2セットの合計10本。109% FTPはスレッショルド(91-105% FTP)をわずかに超えた領域で、きつさはあるものの「もう無理」というレベルではありません。TSS(トレーニング負荷の指標)は34、IF(平均強度)は0.82で、昼休みや仕事前のトレーニングにも収まる手軽さが魅力です。
40/20’s #2(中級レベル)

#1からインターバル本数を倍増させた中級版です。総時間は58分に延び、メインセットは10本×2セットの合計20本。さらに、仕上げとして125% FTPの3分間VO2maxエフォート(フィニッシャー)が追加されている点が大きな違いです。
| セグメント | 時間 | 強度(%FTP) |
|---|---|---|
| ウォームアップ | 3:00 | 50% |
| アクティベーション(×4) | 0:10 ON / 0:50 OFF | 180% / 50% |
| ビルド | 3:00 | 75% |
| リカバリー | 2:00 | 65% |
| サブスレッショルド | 5:00 | 90% |
| リカバリー | 3:00 | 50% |
| メインセット1(×10) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 109% / 65% |
| レスト | 5:00 | 50% |
| メインセット2(×10) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 109% / 65% |
| レスト | 5:00 | 50% |
| VO2maxフィニッシャー | 3:00 | 125% |
| クールダウン | 5:00 | 50% |
アクティベーションは4本に増え(ただしスプリント強度は180% FTPにやや抑えられています)、ウォームアップ全体がより入念な構成になっています。メインセットの強度は#1と同じ109% FTPですが、1セットあたりの本数が5本から10本に倍増しているため、セット後半では心拍がかなり上がった状態でエフォートを繰り返すことになります。
最大の特徴は、2セット20本のインターバルで疲労が蓄積した状態から挑む3分間@125% FTPのVO2maxフィニッシャーです。VO2maxゾーン(106-120% FTP)をさらに超えた強度で、疲労状態での高出力維持能力が試されます。TSS 71、IF 0.86と、しっかりとしたトレーニング効果が得られるセッションです。
40/20 Efforts(上級レベル)

シリーズ最高強度のワークアウトです。デザイナーはElliot Lipskiで、強度が130% FTPへ大幅に引き上げられています。#1・#2の109% FTPから21ポイントの上昇は、体感的にもまったく別次元のきつさです。
| セグメント | 時間 | 強度(%FTP) |
|---|---|---|
| ウォームアップ | 5:00 | 50%→85%(ランプ) |
| ステディブロック | 5:00 | 92% |
| リカバリー | 3:00 | 50% |
| メインセット1(×6) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 130% / 45% |
| レスト | 7:00 | 55% |
| メインセット2(×6) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 130% / 45% |
| レスト | 7:00 | 55% |
| メインセット3(×6) | 0:40 ON / 0:20 OFF | 130% / 45% |
| クールダウン | 6:00 | 85%→30%(ランプダウン) |
130% FTPはVO2maxゾーンの上限に位置する強度で、MyWhoosh公式ブログでも「ほぼすべてのエリート・プロサイクリストが取り入れているクラシックなインターバルセッション」と紹介されています。3セット×6本の合計18本で、リカバリーは45% FTPまで深く落として回復を促す設計です。セット間のレストも7分と長く確保されており、高強度を各セットの最後まで維持できるよう配慮されています。
ウォームアップはランプ(徐々に強度を上げる)形式で、スプリントによるアクティベーションの代わりに92% FTP(Sweet Spotゾーン)の5分間ステディブロックで身体を準備します。TSS 66、IF 0.88と数値上は#2より低く見えますが、これは総時間が短いためであり、分あたりの強度は明らかにシリーズ最高です。
3ワークアウト比較
3つのワークアウトの違いを一覧で確認してみましょう。
| 項目 | 40/20’s #1 | 40/20’s #2 | 40/20 Efforts |
|---|---|---|---|
| 難易度 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 総時間 | 31分 | 58分 | 51分 |
| TSS / IF | 34 / 0.82 | 71 / 0.86 | 66 / 0.88 |
| メイン強度 | 109% FTP | 109% FTP | 130% FTP |
| リカバリー強度 | 65% FTP | 65% FTP | 45% FTP |
| セット構成 | 2×5本(10本) | 2×10本(20本) | 3×6本(18本) |
| ハードエフォート合計 | 6分40秒 | 13分20秒 | 12分00秒 |
| 特殊要素 | ビデオコーチ(VOD) | 3分VO2maxフィニッシャー | 130% FTP高強度 |
#1から#2へはボリューム(本数)が倍増し、#2から40/20 Effortsへは強度(パワー出力)が大幅に上がるという、異なる軸でのプログレッションになっています。この設計により、まずは量をこなす持久力を養い、次に質(出力)を高めるという段階的な成長が可能です。
レベル別おすすめと進め方
40/20インターバルが初めての方
まずは40/20’s #1からスタートするのがおすすめです。31分で完結するため心理的なハードルが低く、Katie Zaferesのビデオコーチングを活用すれば各セグメントのポイントを把握しながら進められます。MyWhooshのホーム画面から「Workout & Video」→「Fitness Video Coach」と進むとVODセッションにアクセスできます。
#1を3〜4回こなして「セット2の後半でもパワーを維持できる」「リカバリー中に心拍が十分に下がる」と感じられるようになったら、#2へのステップアップを検討してよいタイミングです。
VO2maxトレーニング経験がある方
すでに30/30sや他のVO2maxインターバルに慣れている方は、40/20’s #2から始めてもよいでしょう。ただし、109% FTPという強度設定は他のプラットフォームの40/20ワークアウト(120-130% FTPが一般的)と比べるとやや控えめです。#2では本数の多さ(20本)と最後の3分間VO2maxフィニッシャー(125% FTP)がチャレンジポイントになります。
さらなる高みを目指す方
40/20’s #2を完遂した上で「もっと強い刺激がほしい」と感じたら、40/20 Effortsに挑戦してみてください。130% FTPはVO2maxゾーンの上限に位置し、40秒間とはいえ相当な出力が求められます。このレベルでは、セッション前の体調管理や栄養摂取の重要性も増してきます。
3つのワークアウトを並行して使い分けることも有効です。疲労が溜まっている週は#1で軽めに刺激を入れ、コンディションの良い日にEffortsに挑戦するといった運用ができます。
なぜ40/20インターバルはVO2max向上に効果的なのか
40/20インターバルの効果を裏付ける研究として、Ronnestad et al.(2020年)の論文が広く引用されています。この研究ではエリートサイクリストを対象に、短いインターバル(30秒ON/15秒OFF)と長いインターバル(4分×5本)の2グループに分けて3週間のトレーニングを実施しました。その結果、短いインターバルグループは20分間の最大パワーテストで4.7%の向上を示したのに対し、長いインターバルグループは1.7%の低下を記録しています。
この結果が示唆しているのは、短いインターバルの「不完全回復を挟みながら繰り返す」という特性が、VO2max領域での酸素摂取を効率的に刺激するということです。40/20形式では、20秒間のリカバリーで心拍がわずかに下がり乳酸が部分的に除去されますが、完全な回復には至らないため、セットを通じて酸素消費量が高い状態が維持されます。
他のショートインターバル形式との比較では、40/20sは酸素摂取のピーク値が最も高くなる傾向があるとされています。30/30s(1:1の比率、130-140% FTP)は総トレーニング量で優れ、30/15s(2:1の比率、125% FTP前後)はVO2max刺激への到達速度で優れるなど、それぞれに異なる強みがあります。40/20sは酸素摂取のピークという点で際立っており、VO2max能力の天井を押し上げたい場面に適しています。
期待される効果は、VO2maxの向上に加えて、無酸素パワーの改善、乳酸除去能力の向上、そしてFTPの副次的な上昇です。レースでのアタック対応力、登りでの粘り、クリテリウムでのコーナー立ち上がりなど、実走での具体的なパフォーマンス向上に直結する能力が鍛えられます。
効果を最大化する5つのコツ
FTP設定を正確に
40/20インターバルの効果はFTP設定の精度に大きく左右されます。FTPが低すぎれば刺激不足に、高すぎればセットを完遂できません。MyWhooshでは「Workouts」→「Testing」カテゴリからランプテストや20分FTPテストを選択でき、8〜12週間ごとの再測定が推奨されています。CyclingIndoorsのレビューでも、FTP設定が保守的すぎるとサブスレッショルド区間が物足りなくなるという指摘がされています。
ERGモードを活用する
ERGモードをオンにしておけば、スマートトレーナーが自動的にパワー出力を調整してくれるため、ケイデンス(ペダル回転数)を維持することだけに集中できます。特に40/20のように短い間隔でON/OFFが切り替わるワークアウトでは、手動でギアを操作する必要がないERGモードの恩恵が大きくなります。ただし、ERGモードではケイデンスが落ちすぎるとトレーナーが過大な負荷をかけてしまう「スパイラル・オブ・デス」が発生することがあります。ハードエフォート中は85-95rpm程度のケイデンスを意識して維持しましょう。
ウォームアップを省略しない
#1では3分間のウォームアップとアクティベーション、#2ではさらにビルドとサブスレッショルドを含む約15分間のウォームアップが設定されています。これらは高強度インターバルに向けて心肺系と筋肉を段階的に準備する重要なフェーズです。時間がないからといってスキップすると、メインセットの序盤で本来のパワーを出し切れなかったり、怪我のリスクが高まったりする可能性があります。
頻度とリカバリーのバランス
40/20インターバルのような高強度セッションは週1〜2回が適切とされています。セッション間には最低48時間の回復を確保し、翌日はリカバリーライドや完全休養に充てるのが効果的です。4〜6週間のメゾサイクル(中期トレーニング期間)で段階的にセット数を増やし、その後1週間の回復週を設けるプログレッションが推奨されています。
セッション前の栄養補給
高強度インターバルでは筋グリコーゲン(筋肉に蓄えられたエネルギー)の消費が激しいため、セッション1〜4時間前に炭水化物を含む食事を済ませておくことが重要です。また、50分を超えるセッション(#2や40/20 Efforts)ではセッション中のエネルギー補給も検討してください。セット間のレスト中にスポーツドリンクやジェルを摂取することで、最後のセットまでパワーを維持しやすくなります。
よくある質問
FTPがどのくらいあれば取り組めますか?
FTPの絶対値に関わらず取り組めます。MyWhooshのワークアウトはすべてFTPに対するパーセンテージで強度が設定されるため、FTP 150Wの方でも250Wの方でも同様の生理学的刺激が得られます。ただし、40/20インターバル自体が高強度トレーニングに分類されるため、インドアトレーニングを始めたばかりの方は、まずSweet Spot(88-94% FTP)やテンポ(76-90% FTP)のワークアウトで基礎体力を養ってから取り組むのがよいでしょう。
#1から順番に進めるべきですか?
必ずしも順番通りでなくても構いません。すでに他のプラットフォームでVO2maxインターバルの経験がある方は#2から始めても問題ありません。ただし、40/20 Effortsは130% FTPという高い強度が設定されているため、#1か#2で40/20フォーマットに慣れてから挑戦することをおすすめします。
ZwiftにもMyWhooshにも40/20ワークアウトがありますが、違いはありますか?
Zwiftにも同名の「40/20’s #1」「40/20’s #2」が存在しますが、強度やセット構成はMyWhoosh版と同様です(いずれもメインセット109% FTP)。MyWhooshの40/20 Effortsは130% FTPで設計されており、Zwiftの同カテゴリのワークアウト(The Famous 40/20’s等)とは強度設定が異なります。最大の違いはプラットフォームの料金体系で、MyWhooshはすべてのワークアウトが完全無料で利用できます。
まとめ
MyWhooshの40/20インターバルシリーズは、VO2max向上を目指すサイクリストにとって効率的なトレーニング手段です。31分で完結する入門版の#1、ボリュームを倍増させた中級版の#2、そして130% FTPの高強度に挑む上級版の40/20 Effortsと、3段階のプログレッションが明確に設計されています。
まずはMyWhooshでFTPテストを実施し、正確なFTP値を設定した上で40/20’s #1から始めてみてください。Katie Zaferesのビデオコーチングを活用すれば、初めてのVO2maxインターバルでもポイントを押さえながら進められます。3〜4回こなして手応えを感じたら#2へ、さらにその先の40/20 Effortsへとステップアップしていくことで、着実にVO2max能力を引き上げていくことができます。


